『大指揮者カール・シューリヒト』

今、読んでいる本です。

大指揮者 カール・シューリヒト 生涯と芸術 (叢書・20世紀の芸術と文学)

大指揮者 カール・シューリヒト 生涯と芸術 (叢書・20世紀の芸術と文学)

カール・シューリヒトには 1939年10月5日という第二次世界大戦が9月に始まったあとにアムステルダム・コンセルトヘボウでマーラー大地の歌を演奏したLIVEのCDがあります。
Lied Von Der Erd

Lied Von Der Erd

この時期に、ユダヤマーラーの曲を演奏するなんてものすごく危険なことだったと思うのですが、実際に6楽章には女性の声で、"Deutchland uber alles, Herr Schuricht!"「世界に冠たるドイツ、ミスター・シューリヒト!」と入っています。これはナチスの女性の妨害の叫びのようです。こんな危険なことをしてその後のシューリヒトはどうなったのかというと、(裏表紙から)「1940年、ユダヤ人の友人がいるという理由でナチによる裁判で有罪判決を受け、仕事が激減しドイツ国内では徐々に忘れられていった。・・・」というわけで、最終的にはスイスに亡命して生き延びることになる。

 シューリヒトはヴィースバーデンからオランダに逃がしたユダヤ人のためにお金を送金したりして、危ない橋を渡っていたようです。また一方で有罪になったときはフルトヴェングラーたちからナチスになんとかとりなしをしてもらったりもしたようですが、戦争が終わるまでスイスでシューリヒトを支援したのはアンセルメだったということです。
 あまりシューリヒトの生涯については読んだことがなかったので、おもしろい読書でした。
CDはあまり残っていませんが、シューリヒトがマーラーを好んで演奏した指揮者であることを、改めて認識できましたし、1910年に初演された第8番の交響曲をすでに1913年に上演していたとは驚きです。